ダンジョン最深階層

もう・・・ダメだっ・・・。

いや、君はいいんだ。そのまま行ってくれ。どうせ僕はもう助からないんだ。
たとえ君だけでも幸せになれたら、僕はそれでいい。だから、どうか僕に構わないでくれっ!!
・・・ ・・・あっ。い、いや。いいんだ。そのまま後ろを振り向かずに前を向いて歩いてくれ。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・い、いや。本当にいいから。本当に。僕はもう・・・ほら。アレだから。ねっ?
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・本当に行きやが・・・っ。い、いや。何でもないんだ。気にしないで。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ったく、テメエがヘマするから俺が・・・ ・・・っ。い、いや。いいって本当にもう。
・・・ ・・・ ・・・せっかくセレリアの事モノに出来そうだったのによ。 ・・・ ・・・ ・・・あ、聞こえてた?
あ、アハハ・・・。で、でもアレだよ? もう僕が助からないのはホントだよ!? 本当だって!
だってほら、見てよこの傷? いくらなんでも・・・こりゃダメでしょ? いや、ダメだってこりゃ。
そりゃ僕だって生きたいけど、こんな傷受けたらもうダメな事ぐらい、魔術師の僕でも分かるよ。
君は戦士だから、物理的に何とか形になれば行けるんじゃないかとか思ってるかもしれないけど、
こりゃダメ。こんなに流暢に喋ってるから元気そうに見えるかもしれないけど、本当はかなりヤバいよ。
もう電池切れかけ。ほら、携帯で言ったらアレ。目盛りが1つしかない状態? そうそうアレアレ!
「早く充電しないとヤベえっ!!!」っていう、あの感じだよねっ。アハハハハッ!!
・・・ ・・・えっ?セレリアと何かあったかって? 別に何がある訳でもないよ。それは心配しないで。
ちょっと、その・・・。えっ、いや。何でもないっ!! 何もないからっ!! そんな怖い顔しないでよっ!!
あっ!! ダ、ダメだってそんな事!! 放っといても僕はそのうち死んじゃうんだってばっっ!!
あーーーーーーーーーっっっっっ・・・・・・・・・・!!!!!!!!!

・・・なんじゃこれ。セレリアって誰やねん。仲間の戦士も極端に短気やし。
ていうか何でファンタジックな世界観っぽくしてるくせに最後に携帯が出てくんねん。
最初の1行目はこういうつもりでなく、全然違う意味で書いたんだが、それじゃちょっと何なので、
好奇心で「瀕死の仲間を置いていく仲間と、その仲間が去った後の心境」を描いてみたくなって、
それやってる内に、「瀕死のくせにやたら元気に喋らせた方が面白い」って考えて、結果こうなった。
もっと色々と肉付けができるような話だが、あんまり詳しくしても逆に面白くないので、その部分は、
個人個人の想像力で補填してもらう事にしよう。

こういう思考回路、何か有効利用できんもんだろうか。