部下

仕事帰り。これから家まで電車2本、50分の道のりが始まる。
その「さ、今からスタートやな」と思い、地下鉄のドアが開いた瞬間。

「・・・いやぁ、ホンマにありがとうございましたっ!!」

開くドアとは明らかに反対方向(電車内向き)に深く礼をする男が2人。
この時点では「あぁ・・・、上の人が礼節に厳しいんだろうな・・・。何ともいえないなぁ。」だったのだが、

「・・・去年も色々ありましたが、今年もどうぞよろしくお願いしますっ!ありがとうございました!!」

・・・ ・・・いつまでやっとんねん。

「それでは、お先に失礼しますっ!!」

・・・ ・・・ドア閉まるやないかっ!!!
と叫びそうになった時にようやくドアの方向(ホーム側)を向いて、2人は電車を降りた。
もちろん電車に乗る側は、それが終わるまで電車に乗れず。危うく乗り過ごし掛ける勢いだった。
しかも引き続き電車に乗っている男3人(おそらく上司)は、そのいきさつに対して何の反応も無く、
「ぁあ。これでようやく大人の会話ができるねぇ。ハッハッハ。」みたいな雰囲気で談笑している。
別にそんな事に対して「すいません」を言えとまでは思わないが、その反応はどうなんだろうか。

地下鉄を降り、阪神電車に乗った時にも同じ状況が続いた。
今日は割と遅くなったので電車も混みまくりだったのもあり、できるだけ空いている所に乗った。
すると、電車が動き出した途端に、

「・・・いやぁ、ホントにそうっスよねっ!!」

声がやたらとデカい、同世代ぐらいの男の隣の立ち位置で乗車する事になった。
最初はそんなに気にせずにMD(松ちゃんの放送室)を聞いていたのだが、

「・・・えぇ。それは僕もそう思いますっ!!」

・・・ ・・・もうちょっと声抑えて喋れんのか?
満員電車の中で、その男の声だけが際立って大きく響いているのだが、当人は当然気づかない。
周りに迷惑になるのでMDも音量を小さめにしていたのだが、すぐ隣にいるのでまるで聴こえない。
たまらず音量を上げてみると、自分のその仕草に気づいたのか、

「っ・・・ ・・・ ・・・。」

軽く舌打ちしてこっちを睨んで来た。あのなぁ・・・。お前なぁ・・・。
以後は、お決まりのフレーズが頭の中で何度も反芻するようにして響くばかりであった。

状況が状況ならそうなるのも仕方がないのか、と思う節も確かにあるが。両者共やや行き過ぎ。